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「イザヤールさまが亡くなりました。
これからエルギオスさまを倒しに行きます」
上級天使に刃向かうというのか?と問えば。
「人間になりました」と、あっさり言ってのけた。
頭が追い付いていかない。
懐かしい名前と、天使が人になった、という事実。
「今はラヴィエルさまのことも見えますが、きっと全てが終われば」
エルギオスさまを倒せば。
「もう、お会い出来ないと思いましたので、最後のご挨拶を」
「そうか」
何故神はこんな試練を与えたもうたのか。
神よ。
その淡々と告げるその奥に、嵐が渦巻いている。
「私はいつでもここにいる。キミから見えなくても、ここにいる」
「…はい」
私はここから動けない。
…初めて私に与えられた使命を呪った。
その子の頭を撫でた。
直接触れることは出来ないが、それでも撫でた。
「ラヴィエルさま…」
その人間は、漸く笑った。
師よ兄よ。
何故全てをこの子に背負わせるのか。
◇◆◇
あら、発売一周年記念。
「貴方は仲間に恵まれていて羨ましいです。
私は、…私の周りにも信頼出来る仲間は居ましたよ。
ただ、長く旅をしていたら、そうでない者たちとも付き合うことだってあります。
私の力を気持ち悪いと言う人。
隙をついて身ぐるみを剥ごうとした人。
天使と告げて、笑い者になったことだって、一度や二度ではありませんでした。
…あの時の私を支えていたのは、『天使界に帰る』ことだけでした。
だから、エルギオス様を解放し、皆が星になり…私はどうしていいのかわからなくなったんです。
人間が嫌いなわけではないんですよ。ただ、私は天使でありたかっただけなんです」
◇◆◇
こんな主人公がいてもいいかな、と。
今回は仲間も容姿も性別も選べるので、楽しい分、決めるのに結構悩みました(笑)
で、主人公くん、サンディとのやり取りからさっするに、天然ボケなんじゃないかと…。
歴代主人公は普通に人間として生活してた訳ですが、今回は人外ですから、本からの知識はあっても、実際に過ごしてみたら、スッゴク驚いたに違いない。
恋愛感情とか、金銭感覚とか。
で す が。
ちょっとひねた見方をしてみました。
村人に冷たくされても、傷付けられても、無理難題を押し付けられても、反応が無かった訳。
それは、『天使は人間を護るもの』と言うことを当たり前だと思っているから。どこか『自分、天使なんで』と、一歩引いた見方をしててもいいなと。
飼っているペットに反抗されても『可愛いな☆』みたいな。
そうすると、大分メインストーリーのラストが辛くなるんですがね。
ドラクエにおいて、主人公が無反応なのはいつものことなんですけど、無理矢理こじつけてみました。
「辛いですね」
突然かけられた声にイザヤールは内心驚くが、それを悟られぬ用に振り向き大地を蹴って一気に下がる。
(…気がつかなかった)
いつの間に彼は己の後ろに居たのか。
相手は弟子の仲間の1人。確か魔法戦士である。既にレベルは高いようで、先ほどの戦いでも補助に戦力にと活躍をしていた。
あの人形の一件で、彼女は酷く心を痛めているようだった。元来思いやりのある彼女には、今回の戦いはかなり辛かったのだろう。
偵察に来ている筈だったのに近くまで降りてきてしまったのは、彼女の己を呼ぶ声が聞こえたから…。
いや、必死に哀しみを堪えるその姿に思わず、昔のように抱きしめようとしてしまったからだった。
そんなことを出来もしないのに。
「そんな睨まないで下さい。別に貴方と戦いたい訳ではないんです」
「……私の姿が見える。理由はそれだけで十分だ」
この姿を見える人間もまれに居る。まして、この魔法戦士は天使を共に行動している身である。感覚が研ぎすまされているのかもしれない。
「何度も心配で見に来るなんて、よっぽど大切にしてらっしゃるんですね」
相手はその場に座る。おそらく敵意が無いことを見せるためだろう。
「何のことだ」
だが、イザヤールはそこを動かない。
「…あの子は会いたがっています。そんなに心配なら姿を現せばいいじゃないですか」
そして、何もかもぶちまけてしまえばいい。
その言葉にイザヤールは目を大きく開き、傍らの剣の感触を確かめた。
(こいつは何者だ。そもそもこのオーラは…)
「お前は人間では無いな。モンスターでも、…天使でもない」
「……人間ですよ。ちょっと毛色が違うのは認めますが」
カチリ、と硬い音がする。
イザヤールが剣に右手をかけた音だ。
その気配に、彼はそっと目を伏せ、相手を見上げた。そしてそのまま一言も発することなく、イザヤールは魔法戦士を睨み、魔法戦士はイザヤールを見つめる。
「…そんなに私たちを、彼女を信用出来ませんか?」
「何の話か分からんな」
「彼女は、今は弱い。けれど必ずこの旅で貴方と並ぶ実力を付けるでしょう。そうすれば、きっと」
相手からこぼれ落ちる言葉は、叫びに似ていた。縋るような言葉だった。
◇◆◇
なんか長くなったんで切ります。
こっそり師匠が見守っていたらいいな。
唐突にそう叫ばれて、ラヴィエルは固まった。
何を言われたのか理解するのに一秒。
それを言葉にするのに二秒かかった。
「…は?」
合計三秒費やして出た言葉は、何とも間抜けな音。
しかし、それは仕方ない事だろう。
「ですから!あの方はセクシーとキュート、どちらの姿にときめくと思います??」
ずずいっと寄ってくる彼女は、元守護天使にして、今は地上の守り人である。 そして話題になっているのは、ラヴィエルの兄、こちらも元守護天使にして、現在は彼女の仲間であるイザヤールのことだ。
最近彼女のパーティーに加わったばかりで、慣れないことに四苦八苦していると言っていたが…。
「ラ~ヴィ~エ~ル~さまー!」
「…酔っているな?」
彼女をよく見れば、目は充血し、顔は赤く、何より片手にジョッキを持っている。
ぞくに言う『絡まれている』状態だ。
ハイテンションな相手の後ろには、先ほどまで一緒に飲んでいたらしいバトルマスターが、明後日の方向を向いていた。
しかし、頬に汗が光っている。
ルイーダやリッカは笑いを噛み殺しているようだった。
「酔ってません!
そんなことよりあの方は、どんな女性がお好みでしょうか?」
「…さあ?離れていた期間が長くて…」
「やっぱり、こう、『ぼんっきゅっぼん』でしょうか?それともロリコン!!なんてことは…」
聞いていない。
自分の世界に入って、全く聞いていない。
そして、身ぶり手ぶりでボディを表現しているあたり、もう俗世に染まりまくっている。
最初はあんなに純粋だったのに、馴染むとは恐ろしいものだ。
ちなみに、仲間以外からは天使であるラヴィエルの姿は見えていない。ということは、彼女は端から見ると『壁と話している』のだが、ここは深夜の酒場である。
<酔った少女の奇行>など、気にとめるものは居ない。
「はっ!そうです!分からないなら両方で攻めてみればいいんですよね?」
「…あぁ、」
ラヴィエルは聞き流すことにした。
何を言っても自己完結するのなら、適当に相づちをうって、満足してもらうのが一番いい。これは、この酒場で人間を観察して知ったこと。
水着がどーたら、ビスチェがうんたら、メイド服がかんたら言っている。
「ラヴィエルさま、ありがとうございます!!」
「そうか」
とりあえず、彼女の中で何かが終わったらしい。
「私、イザヤールさまを落とします。必ず陥落させてみます」
彼女は輝いていた。女神の果実のように眩しい。
「…そうか」
「はい☆」
その天使の微笑みを残して、彼女は二階へとスキップで上がっていく。
あの様子だと、今からイザヤールの部屋に行くようである。
――まあ、いいか。
あの堅物が右往左往するのは面白そうだしな。
ラヴィエルはそう思うと、再び人間で溢れ返る酒場を眺めた。
明日の朝には、妙にやつれた兄に会うのを楽しみにして。
◇◆◇
唐突に浮かんだドラクエ9の、まかさの女主イザ。
イザヤールは絶対ヘタレだと信じています(笑)
でも私のマイキャラは男…。
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