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気のむくままに、更新中… いわゆるネタ。 本館は更新が止まっていますが、日記は儚く動いてます(^_^;) PCからでも携帯からでも見れますが、PCからの方が見やすいかと…。 *関連会社様とは一切関係がございません。個人の趣味の範囲内・常識の範囲内でお楽しみください。
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墜ちた天使は、体を引き摺りながら夜道へと足を踏み出した。

一歩進む度に、背骨が、脚が、内臓が悲鳴をあげる。ふらつき、目眩がする。

目指すのは朽ち果てた天使の像。薄汚れ、苔がむし、羽根は付け根からもげ、既にそれが何であるか知らぬ人々も多いと聞いた。

けれど、微動な天使の波動を感じる。
呼ばれているのだ。
己は。

負に覆われた守護天使の像の足元に倒れ込むように跪く。

ここは、怒りと哀しみが渦巻いていた。

「何を、そんなに、嘆、いて、お、られる、のです、か?」

その渦は何も答えず、ただ激しく己の体を突き抜けていく。
心を強く持たねば流されてしまう。

ウラギラレタ。
シンジテイタ。
クヤシイ。
クルシイ。

朽ちた天使はそう叫ぶ。


「裏切られた、」
誰に?
「信じていた、のに」
いざやーる、さま。
「悔しい」
あの、冷たい目。
「苦しい」
心が。


ニクイ!ニクイ!


「止めてくださいっ」

髪を振り乱し、脂汗をかき、耳をふさぎ、目を閉じても。

ニクイ、憎い。
「憎い、ニクイ」

像から流れ込む重い声から逃れられない。

「お願い、し、ます。声、を、止め、て。来な……い、で」

信頼し敬愛するあの人を。

憎ませないで。


◇◆◇
暗っ!
なんつーかイザ主っぽい…。
女神の果実を奪われて落とされた直後。

マジで師匠が嫌いになりかけました(笑)

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その日、若きグランパニアの王は突如退位を表明した。当初、国内は混乱すると思われていたが、あっさりと次期王は決まり目立ったことはなかった。

「前々から決めていたんだな」
「父さん…ごめんなさい」

中庭に佇むその影に、白髪が混じりかけた男が、声をかけた。
咎めている訳ではない。それは苦笑に近かった。

「ドリスなら任せられると思ったんです。僕は、いつ戻るか分からないから」
「よく彼女が受けたね」
「…メチャクチャ怒られました。でも、最後は、納得してくれました」


――バカね!アンタは本当にバカ!世界の果てでのたれ死ねばいいんだわ!
私だって王家の人間よ。アンタ以上の王になってやるんだから!


男は、愛して止まない息子の顔を見つめる。髪色と口元は妻に似ているが、目元は自分譲りだと、かつて言われたことがある。

「これが、最良の選択なんです。
…僕が居なくなれば、全て丸く収まる」
「すまなかったね。お前を追い詰めてしまった」
「そんなこと無いです!」
最愛の息子は、父が、自分が、そして世界が求めていた勇者だった。
遥か昔、魔王を滅ぼした天空の勇者の再来。そして、運命に導かれ、自分たちもまた、魔界に降り立ったのだ。
やがて幾年月が過ぎ、己は彼に王位を譲った。
だが、それから少しずつ歯車は狂い初めてしまった。
“世界を救った勇者が治める国”

その存在は父王の時より強く世界に衝撃を与え。
結果、内外に要らぬ事態を招いてしまった。
善くも悪くも強き者は人を呼ぶ。そして人は秩序と破壊をもたらす。

しかし。
最大の原因はそれでは無い。彼を追い詰めたのは、彼自身だった。

「鎧と兜は置いていくんだね」

その言葉に、目線をそらし小さく頷き、それから呟いた。

「抑制できなくなりそうで」

以前、一度だけその言葉を耳にしたことがあった。恐怖に顔をひきつらせ、幼子のように父の元へ飛び込んできたのだ。

――自分が怖いんです。力を解放させてしまいたいと願う自分が。もっと強くなりたいと思う己が。

すがる息子を、父は抱き締めることしか出来なかった。


「だから父さん、僕が自分を律する時がくるまで、それを預かっていていただけませんか?」
「構わないよ。
それに、お父さんとお母さんはお前が残り香が無いと寂しいからねぇ…」

しみじみとそう答えると、漸く彼は微笑みを浮かべた。それはまだ弱々しいものではあったが。

「放浪癖はお祖父さんからの遺伝だ。気にするな。
そして、ケリが着いたら戻って来なさい。
ここはお前の家なんだから」
「はい」

彼は目を瞑ると、大きく息を吐いた。次ここを訪れるのは、国民に祖母に祖父に母に、そして父に恥じぬ勇者になった時。

「それでは行って参ります」
「あぁ」


そして勇者は伝説となる。

◆◇◆
若くして力を手に入れたらどうなっちゃうんでしょう?

基本どの色の息子でも良いように、あえて髪色を書きませんでした。

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主人公がちょっとスレています(苦笑)

ご注意を。







「それで、そろそろ腹を割って話さない?」



月すら無い夜。海に浮かぶ船の一室で、黒髪の女性は椅子に座ったまま、じっと青年を見つめた。

口にうっすら笑いを浮かべて。



「何をだい?」



だが、問われた青年は背を向けたまま。

手元の武器の点検を続ける。



「私を選んだ訳よ」

「それは勿論…」

「『愛してる』なんて言わないでよ。気持ちが悪い」

「気持ちが悪い、ね」



くすり、と彼が笑った気配がする。



「えぇ。嘘ぐらい見抜けるわ」

「それじゃあ、デボラ、君はどうなんだい?」



名目上は夫である青年は、漸く動きを止めて、ゆっくりと振り向いた。

食えない微笑みを張り付けて。



「前も話したじゃない。忘れたの?呆けるには早いわよ。

あの街を出たかったのよ。世界を巡るって言うのも、中々刺激的だわ。

この空と海の果てと大地の底を見るのも悪くない」

「本当に?」

「えぇ」



他に何があるの?と、カリソメの妻は髪先を弄りながら答えた。



「へぇ」

「あんたは?私の睨みでは、あのビアンカって娘が本命。フローラのことも満更じゃないみたいだったけど?」

「俺はビアンカが好きだよ。そして、彼女たちを失いたくない」



向かい合う二人の笑みが深くなった。

デボラ、と呼ばれた女性は立ち上がり、夫の顔を下から覗き込む。

夫は、彼女の腰に手を回し、妻はその胸元に顔を寄せた。



「俺には、託された夢がある。その夢を叶える為なら何だってするさ。

…何だってね。

手段は問わない」



暗い暗い瞳。感情を消した目。

その目にデボラの背中はゾクリ、と震えた。

だが、決して嫌な震えでは無い。



「二人を巻き込みたくないし、そんな俺を見せたくない」

「私はいいのね?」

「そう。君はスリルが好きだろう?

一緒に堕ちてくれるだろうと思ってね。

それこそ、大地の底まで」



あっけらかんと言い放つ伴侶に、体を振るわせて笑った。



「いいわ。乗ってあげる。私たち、いい共犯者になるわね」

「それだけじゃないんだけどね」

「あら、まだあるの?」



クスクスと、先ほどの蠱惑的な笑みをから、少女の様な微笑みになり、ゆっくりと相手の口元をなぞる。彼はその指先を掴むと軽く口付けた。



「あぁ。でも、これはまだ言わない。

君が真実を教えてくれるまで、ね」

「真実?」

「君が、あの場に飛び込んできた本当の理由」



ほんの一瞬、彼女の虹彩が大きくなる。だが、次の瞬きでそれは消えた。



「……何のとこかしらね」「まあ、いいけど。で、女王様の好奇心はみたされたかな?」

「えぇ、今日のところは」

そっけなく離れるとドアノブに手をかける。ガチリ、と回る音がした。



「おや、今夜も独り寝かい?そろそろ同室でもバチは当たらないと思うけど?」

「そうね。次の街に着いたら考えなくも無いわ」

「少なくとも、窓の鍵は開けておいて欲しいね」



忍び込むからと、一見すれば邪気の無い笑みだが、一枚剥がせば黒い笑みで続けた。

この暗い笑みが嫌では無いのだ。不思議な事に。



「…ね、デボラ」



彼女がドアに隠れる彼は小声で、だが、彼女に聞こえるように呟いた。



「『愛してるよ』」



数秒、彼女はその場に立つものの、振り向きもせずに言い放つ。



「『えぇ、私も』」



こんな白々しい夫婦の会話は、世界中を探しても他に有りはしないだろう。

デボラはそう感じながら、ゆっくりとドアを閉じた。





彼女たちが大切だと、彼は言った。

それはデボラも同じこと。

そしてこの1ヶ月。共に過ごして分かったことがある。

彼の異常な力と、そして果てが見えぬ旅。



「私もフローラは大切よ。誰があんたなんかに嫁がせるものですか」



そう吐き捨てると月の無い海を見た。

妹の住む家はとうに見えなくなっていた。







男は亡き父から託された剣を手に取り、なぞった。

重くて、装備は出来ない。先日手に入れた盾も同じだった。



自分は勇者ではない!

自分では母を助けられない?

何故自分が勇者ではない!

勇者であれば父を故郷を救えた?



もう誰も巻き込みたくない。

この盾はどさくさに紛れて盗み出すことさえ考えていたのだ。

それが最良の選択だと。

皆を気付つけることになるが、死なせることはない。やがてこんな男のことなど忘れて平和に暮らすだろうと。

そう、考えた。

なのに、何故彼女を選んだ?



「同じだと思ったから、かな」



プライド高く振る舞う仕種の奥に、微かに見えた“淋しさ”



「君にそれを告げたら、烈火の如く怒るだろうね」



男の呟きは誰にも聴かれることなく、部屋の炎と共に消えた。





◆◇◆

勇者ヨシヒコを見てたら5を思い出しました(笑)色々巡ってみたら、デボラさんって人気なんですねぇ。



スレた主人公なら、デボラさんに対抗出来そうかな、と。

花壇に咲く花を咲かせるように、結婚してから育む愛があってもいいじゃない。

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*本編後。絶賛BL中…。「心の選択を」の後です。



カーテンからこぼれる陽の光に、漸くツァーリは目蓋を開いた。

朝であるのは分かるのだが、あれから何日たったのだろう。
体に来るであろう痛みの衝撃を予想しながら、上半身を起こすものの、何もない。何もなくて拍子抜けしてしまった。

「起きたか」

そこへ、主悪の根元が湯気が立つものを運んできた。
ベットの上でゆっくりとウェストを捻ると、バキバキと骨が鳴る。
痛みは無くとも、体は凝っているらしい。

「二日間ぐらい?」
「四日だ」
「よっ!」

衝撃的な真実に、銀髪が大きく跳ね上がる。
四日間も、ツァーリは寝床に押し付けられていたのだ。目の前で涼しげな顔をして朝食の用意をしている男、に。

「食べろ」

レンゲを出されて反射的に口をあけた。どろりとしたほんのり甘味のある固形物…おかゆ、と言う料理名を思い出す。
ウォルロ村でリッカに食べさせられたものだ。間違いなく彼女の手料理である。

「リッカとルイーダさんには?」
「疲労で睡眠中と」
「…そう」

確かに間違っていない。その耐えられぬ疲労を与えたのは、この赤毛の青年なのだが。
レンゲの中身が口に消えれば、エスは又掬って口元へ運ぶ。
マメな男である。
そう言えば、とツァーリは咀嚼しながら周囲を見回す。
四日間色々あった割には綺麗だった。部屋も身の回りも。つまり、彼が気絶した自分を世話をしてくれたらしい。しかも甲斐甲斐しく。
シーツは新しいし、ボンヤリと身を清めて貰った記憶があった。

「口をあけろ」
「………」

もう一度、あけると、やはりおかゆを注ぎ込まれた。
(――何か、楽しそうだな……)

止めるまでやりそうだ。


◇◆◇

新年早々何を書いてるんでしょうか…。
いや、むしろ今だから書けるのか!?
この後、クエスト等をする為に世界を回ります。んで、また女神の果実と再会するんです。

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*本編終了直後。BL仲間主。



あの星降る夜に、変わった。


「私とカイは、一度郷里に戻るわ。“あの人”のことを思うと、そうした方がよさそうだから」
「うん、僕もそう思うよ」

天使たちが在るべき所に還ったように、仲間はそれぞれの場所へ。

「おれが直ぐ戻ってくるからよ!」
「ふふ。僕は大丈夫だよ。二人とも、ゆっくり休んでね」

かつて天使だった人間には、その場所が無い。

「暫くはリッカの元に居るつもりだけど」
「そうね、分かったわ」


頼もしい仲間が、二人、去った。
常に共に居た妖精は、とうに見えくなっていた。


皆、居なくなる。
この世界に一人だけ。
それが運命ならば。
それを受け入れよう。


「君はどうするの?」
「元より帰る場所などない」
「ここに居るの?」
「心が向くままに」
「その心は何て?」

赤毛の仲間はその眼を細くして、ツァーリを見る。
その、儚い日溜まりを。

窓から陽光が降り注ぐ。本来ならば、銀髪なそれを内包し輝くはずなのだが、今は、反射することも出来ずに、深い闇を作っている。

「…触れ合っていれば、自ずと通じると思っていたのは間違いか」

エスは一歩、ツァーリへと進む。床がギチリと鳴った。

「君は人間で、僕は天使…だったから」

かつて、彼は人で己は天使だった。
だから目の前の仲間は、決定的な出来事を避けてきた。
その曖昧さが、ツァーリを混乱させていた。

この気持ちは何だろうか。彼が去ったら寂しいのか。
何故?

答えはすぐそこにあるのに、それを直視する勇気がない。
向こうから触れてくれれば、あるいは。

エスの手が、ツァーリの白磁の膚に触れた。
触れた手の甲にあるのは、無数の傷痕。一番目立つのは、知り合った当初にツァーリを庇って出来たものだ。

「僕は、何故君が僕に固執するのか分からない。でも、こうして体温を感じると、…安心するんだ」
「………分からない、か」

銀髪の青年は、強く目をつぶった。相手の表情がとても苦しそうにしていたから。

「知識としては理解しているよ。でも、今はまだ、分からないんだ」

指先がゆっくりと輪郭をなぞる。なぞられた所が、熱を持つ。

厳重に封印した心がある。
そこに答えがあるのに。

「分からないんだ」

自ら解放することが出来ない。その心から目を反らし、気付かない振りをする。

「…嫌なら最初から拒絶すればいい。何故逃げなかった?」

ツァーリが見開くと、そのルビーの瞳に薄く笑う相手が映る。
息が、詰まる。

「君は、卑怯だ」

その言葉にくっと喉奥でエスは笑った。

「俺に手を差し伸べたのは誰だ?」
「それは、それが天使の職務だったから!」

その仄暗い瞳が、救いを求めていたから。
助けてくれと。
無言の叫びを。

…最初は、そうだった、筈。
いつから、心が乱れた?
どこから、道を違えた?

「俺にどうして欲しい?
消えて欲しいのか、傍に居て欲しいのか。
貴様が選べ」

「えら、ぶ?」

ルビーの瞳が揺れる。

もう天使ではない。
神は見えない。

誰にも指示されない。
選択の自由。

「貴様の意思に俺は従う」

幾重にも封印されたその柔らかい心。
じわりじわりと侵食去れていく。
彼の声が、温もりが、それを溶かしていく。
がんじ絡めの封を。

エスはツァーリを抱き締めた。

「待っ、て」
「選べ。どちらを望む?」

◇◆◇

細かいとこ考えてないのに、話だけが膨らみます(笑)
本編中でもチューとかしてたっぽいですよ!マジかよ!!
あれですよ、聖なる者だから、本番(マテ)まで出来なかったんですよ。うん。

そして、選択させると言いながら、一つの答えのみを言わそうとしてる…。

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人になった。

けれど違和感は無かった。

天使界で学んでいたことだった。

天使は人を参考にして創られた。
もっとも新しく、もっとも素晴らしい生命体であると考えていた天使もいた。

だが、そうなのだろうか。
人に限らずすべての生命体は、母体から産まれるものだ。
草木や昆虫も配合して産まれる。

だが、天使は違うのだ。

ある日突然木の下に出現する。
父も母もない。

それは進化なのか?
営みから外れた存在ではないのか?


人に還った、のかもしれない。

*******

「ボクは全てを肯定するよ。
天使は、本来在るべき姿に戻ったんだ。
人から造られた天使は、今、漸くその使命から解き放たれて自由になった」



◇◆◇

誰でもない、守り人の独白

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*本編後。二人の関係は進んでます(笑)

苦手な方は御注意を。





ぐぃっ。





朝日を感じて目覚めると、首が右斜め下固定されていた。



「えっ」



全く予想外の状況に、ツァーリは肘で体を支えたままの態勢で暫く停止する。首が、全然動かない!

右肘に全体重をかけ、自由になった左手で首回りを触ってみる。



「あ…」



髪の毛が、背中のファスナーに挟まっている。

昨日、宝の地図のダンジョンを見つけ、連戦に連戦を重ねて戻り、そのまま着替えもせずに寝てしまったのだ。それに、最近手入れを怠っていた為に伸びてしまった銀髪が絡まったんだろう。

サンディに取って貰おうと呼び掛けたが、生憎出掛けているらしい。

仕方無しに無理やり引き抜いた。



「…っ」



一瞬走る小さな痛みに眉を潜めて…。



「何をしている」



呆れを含んだ声色がした。エスだ。

朝の鍛練から帰って来たのだろう。汗の臭いがする。



「おはよう。エス」



どんな時でも微笑みを崩さない。勿論、こんな時でもツァーリは柔らかい微笑みである。

瞬時にエスは状況を理解すると、僅かに溜め息を吐いた。



「……」



ツァーリの背後に行き、ベッドに腰掛ける。そしてファスナーと銀糸を分け始めた。



「ありがとう」



普段はモンスターを叩き潰す指先は、太く大きいのだが、その実、メンバー内で一番器用なのだ。

一分をしないうちに、自由になった。

たが動く気配がなく、背後からジジジっと、金具がずれる音がする。ファスナーを下ろしているらしい。



「?」



肩甲骨の辺りまで下ろされる。外気に触れ、肌が粟立つ。

いつの間にか、ウェストが両手に固定され、いや、左手で固定され、右手はもぞもぞと動いている。



「まっ、――っ!」



明らかに不埒に動く手に意識が向いた時だった。

生温かい質感が背中に生まれる。

ゆっくりと、動く。



「っ」



上に。下に。繰り返す。

過ぎ去ったところは、又、粟立つ。



「エスっ」



切羽詰まった声で非難を上げれば、くぐもった笑い声。

有らん限りの力で振り返り手を伸ばしても、パーティー内最速を誇る彼を捕まえることは出来ず、くつくつと笑い声だけ残して、消えてしまった。

湯浴びに行くのだろう。



「……はぁ」



何だか朝から体力を使いきった気がして、再びベッドに身を投げた。





◇◆◇



エスがへんたいに!

BLな作品が無いので書いてみたら、エスがへんたいに!

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*「先ずは…」の前の話しになります。


黒騎士は、銀髪の旅芸人と言葉を交わすと、何処かへと消えた。魔法使いも僧侶も、その時は魔力をほぼ使い果たし意識をそちらに向ける余裕はなく、武道家は辛うじて立っているだけだった。
だから、旅芸人と黒騎士の会話を殆ど聴いていない。

「とりあえず、セントシュタインに戻りたいと思います」

銀髪の旅芸人の言葉に、3人は大きくため息をついた。


それから大急ぎで城まで引き返し、休憩もそこそこにツァーリとエスは、国王に謁見を申し込みに行った。
何故謁見に武道家まで着いていくのか、カイは不思議に思ったが、ルイーダが出してくれたパフェを見るや否や、そんな疑問は何処かへ行ってしまう。
いやに不機嫌な相方をよそに、ありがたくパフェを頬張ることにした。

「で、黒騎士を倒したの?」

ルイーダがグラスを拭きながら訊いてくる。

「わかんねぇ」
「わからない?」
「なんか、あの日溜まりと話して、消えちまった」

日溜まり、そう、彼は日溜まりに似ている。

「日溜まりって彼のこと?…またあだ名をつけたのね」

この口の悪い僧侶には、面白い癖がある。知り合った相手に次々と名前をつけるのだ。カイと長い付き合いの魔法使いは嫌な顔をするが、ルイーダは気に入っていた。
あだ名をつけるのは、彼女があの不思議な旅芸人を気に入っている証だ。
ちなみに、魔法使いのシシィのあだ名は“お嬢”である。

「なんかさ~、日溜まりを形にしたらあんな感じかなって。あ、あの武道家は寝暗っぽいから“黄昏”な。んでピンクのは…」
「ピンク?」
「…んにゃ、なんでもない」

見覚えの無い色名に、女主人はおうむ返しに問うたが、カイはぐるぐるとスプーンをかき回すだけで答えなかった。
そこへ、地を這うような声が、割って入った。

「…で、二人共、私に何か言うことは無いのかしら?」

黙ってやり取りを聴いていたシシィである。眉間に皺を寄せ…ルイーダには彼女の周囲に渦巻く冷気が見えた。
流石のカイも顔を引きつらせて謝る。

「えと、黙ってごめんなさい…わざと黙ってた訳じゃ…嘘です。わざとですごめんなさい。言わない方が面白そうとか思ってました」
「ごめんなさいね。彼の銀髪を見て、もしかしたらって思ったのよ。
彼はあの地震で記憶を無くしたみたいで。
『あの人』も、地震の後に行方不明になったんでしょう?時期も被るし…
でも確証が無くて言い出せなかったの。先入観無しで、直接確認して貰った方が良いと思って」

そこで一度言葉を区切り、シシィの表情を見る。だが、俯いていて、ルイーダからはあまり見えない。

「やっぱり…」
「別人よ。それはまあ、髪の色で私も一瞬見間違えたけれど…、髪以外は似ても似つかないわ。残念ながら」

シシィは紅茶にミルクを注いだ。白が混じり、くすんだ琥珀になる。その琥珀色に浮かぶ己の表情を見たくなく、慌てて飲み込んだ。
「そう。…大丈夫よ。世界を回ってれば見つかるわ。
凄腕のレンジャーなんでしょ?」
「えぇ。信じているわ。
一応、二人が戻ったら色々訊いてみるけど…多分、“あの人”についてはわからないでしょうね」

ポットを手にして、中身を継ぎ足す。たっぷり足された紅茶に映る顔は、やはり酷いものだった。
だが次の僧侶の一言で、シシィは顔を上げた。

「でもさ、あの旅芸人と居ると、何かあるかもな。
あの日溜まり、フツウじゃない」
「え?」
「……何だろうな」

カイは一人ごちると、それきり黙ってしまった。


◇◆◇

一度消しちゃって、書き直したらなんかシリアスになりました(笑)
まあ、いいか。
大筋は変わってないので

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*「もう一人の銀髪」の後の話しになります。




カイの言う“日溜まりと黄昏”が宿に戻ったのは、陽が地平線に沈む頃だった。



確かにあの僧侶の喩えはぴったりだった。朗らかな表情の旅芸人と、影のように居る強面の武道家。

(面白いパーティーになりそうね)

ルイーダは四人が座るテーブルを見ながら、クスリ、と笑った。





「それで、どうだったんですか?」

そうそうにシシィは、ツァーリを質問責めにした。何せ不明なことが多すぎるのだ。

そもそも、何故黒騎士が引き下がったのかも知らないのだ。

だが、目の前の麗人は少しだけ首を傾げて、左手を軽く上げた。そして男性にしては高い声が響く。

「その前に、お互いに自己紹介をしませんか?バタバタしていて、きちんとお話し出来てないでしょう?」

あっさり出鼻を挫かれ、シシィは沈黙する。隣の口の悪い僧侶の肩が震えていたが、彼の言っていることも一理あるので、そのまま椅子に座り直した。



◇◆◇



ツァーリはのんびり、シシィはせっかち。

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*黒騎士退治の序盤。「刃の男」「依頼書」の後になります。





「…っ?シシィ!あの黒いヤツ!」



僧侶が驚いた声をあげるより速く、そのアーモンドの瞳は彼を捉え、凝視していた。

黒い影ではない。

銀色を。



会えば分かると言ったルイーダ。

銀髪の恩人。



(成る程、ね)

シシィは依頼をしてきた彼女の思わせ振りな態度を思い出した。

隣のカイは彼の姿には声をあげていない。と言うことは、彼女は聞いていたのだろう。

(話は後。先ずは…)

「回復を!!」

「お、おう」

湖畔に居る黒い影。それに対峙する銀と紅に向かって、二人は脚を速めた。





「ルカニ!」

「ホイミ!」



背後からの呪文に咄嗟に身をかたくするが、己を包む光に少しだけ安堵した。

「仲間みたい!」

サンディが首元に隠れつつ後ろを確認した。

「魔法使いと僧侶っポイよ!」

「うん!助かりました!ありがとう」

「状況説明を!」

茶髪の魔法使いが、黒騎士を睨み付けたままツァーリの隣へ走り込んだ。

金髪の少女はそのままエスの方へ向かい、回復呪文をかけている。

ツァーリは素早く辺りを見回すと、剣を持ち直し体勢を整える。

「彼が多分、例の黒騎士です。防御が堅い。さみだれつきといなづまつきを使ってきます」

エスが、再び攻撃を仕掛けた。

初めて、黒騎士がよろけた。

「守備力は下げたわ」

「もう一度ルカニを。僧侶の彼女は回復をお願いします」

「分かったわ」

「おう!分かったぜ!」

元気よく上がった少女らしからぬ言葉使いに、ツァーリは目を丸くしたが、僧侶を見るとふわりと微笑んだ。



(日溜まりみたいなヤツ)



僧侶は唱えながら、知り合いに似たその銀髪を眺めた。





◇◆◇



…あの世界って銀髪多かったかなぁ?

武道家イドの名前をエスに変更しました。

イドだと元キャラのイメージが強すぎて(苦笑)

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HN:
ホシノヤドリギ
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女性
自己紹介:
現在、役者として成功することを夢みつつ、しっかり腐女子になっている20代です。

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